二月読書まとめ

2月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1961ページ
ナイス数:16ナイス

スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)スピノザの世界―神あるいは自然 (講談社現代新書)
本書は幾何学的でシンプルなスピノザ哲学の本質的な部分を分かりやすく書いたものである。彼は世界を説明しようとした。「こうすべき」ではなく「このように動いている」ことの記述である。まず『人は「人間は自由意志をもって目的へ向かう」と考えがちであるが、それは誤りで「人間には目的はなく自己の有に固執する力」のみがある』と提示される。更に、感情は自己肯定の度合いにおいて、つまり能動と受動の割合によって決められるという。僕にとってそれらは神の存在が前提でない今でも充分に適用可能に思われ、彼の哲学が非常に魅力的に感じた。
読了日:02月29日 著者:上野 修
ライオンハート (新潮文庫)ライオンハート (新潮文庫)
鳥肌が立った。これはラブストーリーと言われているらしいが、二人の心の駆け引きを描く一般的なそれとは違い、これはむしろ「一つの実存のあり方について」のある種伝記的な話なんだと思う。共感や理解などされる必要もない一つの実存(命、魂)によるそれ自身への恐るべき決断。各々の物語はそれが引き起こした具体的なレベルでの残響だ。そして残響たちは折り重なって、元の音自体を再帰的に形作っていく。人智を超えたその実存的選択に偶然居合わせた観客たちはその身を打ち震わせ、愕然とすることでしか応答すらできないのだ。
読了日:02月28日 著者:恩田 陸
寝ながら学べる構造主義 (文春新書)寝ながら学べる構造主義 (文春新書)
非常に分かりやすく、入門としては最適かと思います。まず原著に当たってうんざりするよりは、こうした位置づけや方向性を把握したうえで一次文献へ進む方がいいのではないでしょうか。かくいう僕ももっと早いうちに読んでおけばと後悔しているところです。まあこうした恣意的な位置づけ自体が、「零度の探求」を標榜する構造主義に反する、(名称目録的言語観に端を発する)権力的なものなのではあることは本書でも触れられていますが、やはりそれでも得るものは大きいと思います。
読了日:02月24日 著者:内田 樹
殺×愛 0 ―きるらぶ ZERO― (富士見ファンタジア文庫)殺×愛 0 ―きるらぶ ZERO― (富士見ファンタジア文庫)
まだ全体の前章といった構成だけど、続きが楽しみになって読み終わりました。聖書を持ち出してくる辺り、結構アレな感じがするけれど無理なく読めたと思います。気になったけどこういった主人公の鈍感さってテンプレなのかな。それと、「終わりなき日常に挑む主人公」という構図がとても好きです。
読了日:02月21日 著者:風見 周
ニッポンの思想 (講談社現代新書)ニッポンの思想 (講談社現代新書)
予備知識は殆どなかったが、80年代から現代まで本書で語られている思想の概要はざっくりながらつかめた感じはする。(ただ文学のとこについては本当に自信がないけれど。)イデアルニューアカ(80年代)、リアルを突き付けられた反ニューアカ(ジャーナリズム)としての90年代、そしてゼロ年代に一旦80〜90年代の思想の土台がリセットされ、新しいルールの元(プレイヤーたちが共有したフィールドにおける、どんな人にも共通する問題系)で現在に至る。ゼロアカなどがこれからの思想市場の拡大を予期させ、個人としても楽しみである。
読了日:02月21日 著者:佐々木敦
カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)
若者の雇用、監視社会、ケータイ依存というバラバラな問題によって本題が浮かび上がる。近代では統一的自我を元に反省によって自己イメージを確立していたが、近代後期ではその統一的立場がなくなってしまい再帰性によって自己が確認されるようになる。それはつまりデータベースと自分との往復運動によってのみ見出される自己であり、その発見を本書ではカーニヴァル化(瞬発的な盛り上がり・ハイテンションな自己啓発)と呼んでいる。私たちはそのデータベースから与えられた自己を宿命的に選択することでしか社会に適合することができないのだ。
読了日:02月10日 著者:鈴木 謙介
アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたかアーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか
アーキテクチャの観点から主に日本のウェブ文化を見る/特に発生のメカニズムと存続のメカニズムを分けて考えるというのを聞いて、ウェブ社会を生態系に見立てた進化論的な説明には納得がいった。ケータイ文化圏やPC文化圏、2ちゃんねるやブログなど様々な文化圏(アーキテクチャ圏)が互いに混在している現状では、携帯小説を操作ログ的リアリズムに従って読解していくような作業を、たとえ面倒であってもただ煽りなどで諦めずに、意識的に行なって、相手のリテラシーを理解していく。その必要性はウェブに浸っている身としてひしと感じた。
読了日:02月07日 著者:濱野 智史

2012年2月の読書メーターまとめ詳細
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