「わたしのものです。」

大好きと嘯くあなたは腕を切り溶け込むふたりは死にゆく夕暮れ


角なくし岸に打ち上げ笑ってももう一度川にかなしみ浮かべて


たそがれに頬をなぞった蝉の部屋気にしない君とじこめた死を


何度目の怯えと赦し刻みつけ君から散らばる栄養素星


部屋の壁顔に見えるよ。ごめんそれ君の不在でできた痕です


日暮らしで必死な気持ちで這わす指輪郭なぞってそれは影です


冷えるのに嘘を祈った白い手はどこの棚にも抜け落ちてます


カオスにはすべての力と存在が潤んだ瞳よ潜在に死を


愛のなく沈む本棚神はなく凝結した血が見慣れた人生


嗜癖した折れ曲がる愛はゴミ箱で白き力は朝日の飛沫に


天井に足音響いた夜明けて牛乳飲んでもわたしだけでした


僕と君だけを夏へと置いたまま冬はひとりでに遠のいていく


街降ってバラバラ砕けき信号のかなしきしるしは聖なる心象


不可逆に空から堕落し踊り子の濁る波間を掬う手こそ白


運命愛加速したけど今は保存された文字しかここにはないよ


うそつきのつめたいやさしさ閉じてから「ねえ好き?」訊ねるがらんどう冬


忌むなかれ焼いた文字だけ残ってて相似した痣は絶望的に


これからも薄れゆく姿見てたいのに繰り返すCM猫を轢き殺す


夜を綴じ想いの欠片は岩礁に誰も悪くない夏に君はいる


空白の意味を赦して投瓶に詰めた思いは「愛してね」海へ