「愛の街」


朝一番早く終わってなんて言うなよ鳩が死ぬここは愛の街


気のつけばアンテナ片手に立ち尽くす無視してく電波イデアール空


北風が街から街へと移るけど私は私が嫌いなだけです


過ちを罪とみなすな知りもせず折れた傘骨気がつけば夏


訊かれても知らない布団の中羽根身悲しい私にお菓子をちょうだい?


踏む砂利の存在意義を破ろうと僕らは必死で算数を解く


砂揺れて消える足跡知りたくて伝えたかった夏の在り方


さよならと三十も書いた夏の日のビビッドなメモリもデータベースに


やさしさの賞味期限は何色だろうと見過ごすあぶくプールサイド冬


許し合うことしかできず落としてもカラスは綺麗よ強がっていてね


赤だよと笑って差し出す雨の君仕方ないけどそれはゴミです


正義とはそういうものです言いたげに命の洗浄イオンモール


死んじゃった。地面に人が息みたく飲まれてったけどたまにはいいよね


いじわるな人去っちゃってかなしくてみね押しざっくり切られる檸檬


自由帳定規を使わず線を引くあの子はずっとさびしかっただけ


坂の上澱んだ記憶に風が吹きポケットに猫と錠剤詰めた


髪流る目指すは風だ彼の手を振り払ってでもつかまえにゆけ


透過した言葉はずっと冷えていたし今日も二人だけ嘘をつきます


人知れず降り積もる部屋は灰色でオレンジ齧って空にゆくんだ


失われたハピネス探しにゆくのだと窓辺で三角定規を手にした


もし君が見てくれるなら何回も手を振り合ってさよならしたい