「千色の風」
何度待つ目覚まし時計妖精になろう新年スタートします
迷惑なテレビの電波に耳塞ぎ弔った猫はにゃあと鳴きます
「魔法だよ」木立が揺れたの指した君「魔法?」「うん、きっと」幸せしかない
光りあれなんてイエスの失言でネギは長くて人にぶつかる
春風や魚の子骨を連れてゆけ、空の教室折り畳まれた葉
街歩きかなしくなって隣人の咳を聞くため映画を見ます
地下鉄も明日に架ける伏線でゆめに会うためゆめを捨てます
眩暈して商店街の底抜ける瞼のように落ちたシャッター
谷底に咲く花に足を滑らせるようなシャボンを幻視した路地
断片をつないでつくった地図開き、空には人工衛星の降る
住宅の中の鳥居も淡く朽ち笑う運命線路は続くよ
みはるかす果てまで平和に田畑満ち植わるひかりも引き延ばされた
色のない光を探した頃思い見上げた天井古びた明かり
過食待ち臥せた黒猫歩かせてストーブの火を天まで返せ
泥雲が地平隠して時止まりようやく安堵し出てくる土竜
風向きで運命変わると言ったのになんでゆめのことばかり話すの
さびしさに色彩見えると言ったってあるのは味だけ苦い味だけ
美容師に罪を押し付けられたので過去の日記に墓標を立てる
ゆきずりの誓いを蹴飛ばしとりあえず腐った林檎を窓から捨てた
一生に一度の願いというのならドライヤーかける間だけいて
苦みから何が生まれる想像でマッチを擦った少女の妄念
驚いた鳥の鳴き声鋭くて竦んだ君の毛布を買いに
風に向け電線切ろうとハサミ手に君の髪にだけ使いたかった
午後五時の身に降るチャイムあとにして目隠し探しに町へゆきます
春嵐揺れる木々から落ちたるは記憶にはない健やかな日々
君だけじゃなくなっていく消えていくおかえり言ってくオートマシーン
びゃくびゃくとぬれたこころの見えぬひびからしたたったあじさいを燃す
1000色の風が枝から舞い上がりちゃんとひとりにならなくっちゃね
行進の踏み出し方が違っても気持ちがよければいいんじゃないの