「錠剤の夢(ver.2)」

< night for start>

色彩の鮮やか過ぎる睡眠に終わりはやがてさよならを見る


鍵盤を壊す光の旋律は躁鬱狂いめいた翌朝


ぱたぱたと羽根から注いだアガペーで朝に朝重ねリセットリプレイ


葬らる虫の命の残響の宿る服着て窓をひらきつ


氷河期の遅延を知らせる鐘の音が朝の列車で配られてゆく


晴れ時々曇りなんて言わないで傘を忘れたことはないから


「わ、わたしが今度の勇者でいいんです?(ミクシイとかしていいんです?)」


ふかふかな布団は海に落ちました。「平和に?」「(落ちた?)」「ふわりと」「(落ちた!)」


目の泳ぐ人たちのつどう昼下がり笑って笑って日を食い潰せ


愛の足りない人たちが嘆きだし風俗から消す習わしの日々


瞬間を切り取るために僕たちは休み時間に銃弾込める


喫煙をやめなよと人にいう前にそれを善意と呼ぶのはやめなよ


鮮やかに他人の弱さを責めたので空と会話がよくできました


歩道橋飛び立ってゆく蝶々は羽根の汚れを名前と読んだ


ざらざらと電話に響いたその声は溶けゆく氷みたいに愛おし


概念は言葉になるよと嘯いて指は四角く遠くを区切る


形ない思いは揺れてしまうけど保った心の温度の綺麗さ


宇宙的数直線を駆使しても相も変わらず愛も変わらず


ポケットの雨球はひとつあたたかく凡てが不可能になる世界で


夜の膜の穿たれ痕に何見てもそれは光で星と呼ばれる


銀色の魚はぬめりを振り払い月を見据えて尾ひれを急かす


おやすみ草匂って景色は指触れず苦み以外をつかめなくなって


見失い星を探して疲れ果て、鍵のように降る錠剤を見る


未視感と既視感しかない地上にて心の薔薇指す美は誰ぞ見る