「四季」
『四季』
「春START」
綻ぶの子は滅ぶのか春に問う 風のいらへはすべて「善し」なり
存在をジャグリングするクラス替え 光の粒子は机に騒ぐ
氷解を求め流離う自己愛が分娩される始業式の日
川べりの卑猥な本が楽しげに新生活を語りはじめる
朝起きて手首に名無しの草が萌え、花が笑って夢をばらまく
「無重力Summer」
汗が服を湿らせたあの学び舎が軌道を描いて僕にぶつかる
全人類詩人化計画進行しスペクトルしか見えなくなった
シエスタのプールに飛び込むようにして沈む夕陽も夏のいいなり
見えずとも大切なものを抱きしめる私は眠り草として居る
クーラーの冷気が蝉と夕立ちと柔肌に溶けてまどろみになる
「Fall into ONE」
海の陽もぼろい硬貨も暗がりもシーツに包んで燃やそう全部
水滴の音、感情が描きかけの器にそっと注がれる音
寂光の調べと共に暁闇は冴えて暖炉のあることを知る
飴色のビンの濾過した記憶へと落ち葉のたまりを風は泳いだ
吐く息は感傷だけとなりゆきて遠く誰かのもとに還りぬ
「Visible Winter」
年の瀬に電飾の群れが襲来し都市は空華の海に溺れる
いじわるな身を削ぐ風の逃走路 凍結の中で花は綻ぶ
正月のバスは悔悟に飛び込んで仏のもとへ人を運びぬ
喚き立つ心の襞を数えきれ 見えざる冬よ僕の孤独を
鮮烈な夢を殺めた白濁の果てない日々の殻を割る音