「あまい静寂」

『あまい静寂』


「脈動はどこまで続いていくのだろう?」君の和訳はいいね鬱だね


ラムネ瓶髑髏の窪に挿し込んで未来を知った暑い夏の日


海なのだろうか汽笛の昇る 散らかったヒレアザミの綿遥かに泳ぐ


階段を踏み外してしまったね 甘いしじまが聞こえているね


何だって涙を誘うようになるトーストの焼ける急かす朝さえ



※これはうたつかい10月号に投稿させていただいたものです。恐縮です。
https://twitter.com/utatsukai


それと、前回短杯に投稿したものを西村湯呑様のブログにて紹介いただきました。ありがとうございます!


”擬態するだけが友ではないのだと古着を売った姉の手に風 (工藤瑞樹)

擬態とは、昆虫などが身を守るために木や石と同じ色になって風景に溶け込むこと。
仲間外れにならないように、みんなと同じ格好をして、同じテレビ番組を見て…誰にも経験があることですよね。特に女性はそういうの大人になってもある感じで、たいへんだなあと思ったりします。(男はわりと中二頃から徐々に独自の道を歩む気がする。歩み過ぎて病と呼ばれる奴もいる)
この「姉」はそんな保身のための見せかけの友情についに嫌気がさして、仲良しの象徴である服を売り払うことにしたのでしょう。代償はけして小さくないけど、でも、自分で決めたこと。本当に着たい服を着て、本当にやりたいことをやる。もしかしたらいつか、それを分かってくれる真の友が見つかるかもしれない。冷たくも爽やかな「風」が、心情を見事に表現して秀逸だと思います。 ”
http://aruarunouta.com/favorites/tancup.html