短歌「世界が文字にならないうちに」

また朝だコインを投げたらうら/おもて 夜は深紅のカーテンに散る


換気する音がうるさい めちゃくちゃに海の氷は掻き混ぜられて


東京は3の腹から産まれ出た 012は足掻けども0


背表紙を撫でれば崖を越える日が孵化する いつかの自分が飛んだ


美しき君の裸を見せてくれ 世界が文字にならないうちに


煮えたぎるブルーベリーに溶ける日の少年は重い銃を手にした


灰はただ天に召される父たちよ静かな街を愛した者よ


カフェインを摂るようにしてあなたからやさしさ奪う僕の指つき


アルバムをめくる手つきが好きと言う僕にキスした渡り鳥たち


幸せは目には見えないなどと言いゴミ処理場に姉は逃げ込む


大概は変わっていくね朝顔はひどく冷たいそんな夜だね


助けてはくれない世界はほっといて忘れた歌をうたって帰ろう